年次有給休暇の前借によって生じる問題とは?


入社から6ヶ月に満たない!年次有給休暇の前借は可能?

入社から半年に満たない従業員は、まだ年次有給休暇の付与が行なわれていない状態です。この時期の従業員が風邪などをひき、やむを得ず会社を休む場合は、当該日のお給料から休んだ分が差し引かれる欠勤扱いになってしまいます。こういった状態を回避したいと考える従業員や事業主の中には、「年次有給休暇の前借」というかなり斬新な発想をする方々も存在するようです。今回は、入社から半年以内に休む従業員への対応に悩む事業主の皆さんと一緒に、労働基準法の観点から「年次有給休暇の前借」について考えていきたいと思います。

年次有給休暇の前借は法律違反

結論から言ってしまうと、労働基準法には「年次有給休暇の前借」という制度はありません。労働基準法で定めていないことを事業主が行った場合、それが労働者にとって労働基準法に照らして不利益な取り扱いであれば、労働基準法違反になってしまいます。有給休暇の前借をきっかけに労使間トラブルが生じた場合、裁判においても「年次有給休暇の前借を許した事業主が悪い」という判断をされるため、会社を守るためにも避けるべき対応策だと言えます。

年次有給休暇の前借で想定されるトラブル

事業主の中には「労働基準監督署にバレなければ前借を許容しても良いだろう」と考える方々も存在します。しかし実際に年次有給休暇の前借を許可すると、下記のような問題やトラブルが生じることもあるため「前借りを社内に導入するメリットは一切ない」といえます。

《6ヶ月経たないうちに従業員が辞めてしまう》
年次有給休暇の前借で最も生じやすいトラブルは、試用期間中だった従業員が入社から6ヶ月経たないうちに退職してしまうことです。休んだ日にもお給料を支払う年次有給休暇は、半年間継続的に出勤して「それなりの信頼関係ができたタイミング」で与えるべきと考えられているのです。

《前借を考慮せずに有給休暇を申請してくる従業員もいる》
年次有給休暇の前借が法的な根拠がないものだと知っている従業員の中には、入社から6ヶ月経ったタイミングで前借を考慮せずに有給休暇の申請をしてくる人たちも見受けられます。既に前借をさせている会社側からすれば、「前借日数を差引いた残日数分しか支給できない」と考えるはずでしょう。しかし、年次有給休暇の前借が入社6か月後に取得した有給休暇の日数を減少させる法的な根拠がないことを知る従業員は、会社側から年次有給休暇の前借による年次有給休暇取得日数の減少措置が許されないと知って、法律どおりに取得した日数すべての年次有給休暇の申請を行います。

まとめ

年次有給休暇の前借を含め、労働基準法で規定されていない行為は認めないとすることは、会社と労働者のトラブルを防ぐ意味合いもあると考えられます。労働基準法上に規定のない前借をした場合は、会社にとってデメリットしか生まれないと断言できますので、従業員からの年次有給休暇の前借の依頼はハッキリ断るべきと言えます。

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