従業員の病欠にも有給休暇は使える?
風邪が流行る真冬になると、多くの従業員が病欠で会社を休むことが増えてきます。こういった場合に一般的な会社では、事後届出の年次有給休暇で欠勤分を相殺する傾向があるようです。では、年次有給休暇で病欠を相殺する対応は、労働基準法違反にならないのでしょうか?
年次有給休暇は病気欠勤に充当できる
労働基準法にもとづいた過去の判例では、「労働者からの請求があった場合は、年次有給休暇を病気欠勤などに充当できる」としています。年次有給休暇の運用ルールとなる事前申請についても、病気欠勤の場合は「予め届け出ることが困難」と考えられるため、会社側の裁量で柔軟な対応をするケースがほとんどとなっているのです。
会社側から無理に年次有給休暇を消化させる必要はない
有給休暇の大前提は、「本人の自発的な申請によって消化されるもの」です。風邪やインフルエンザによって突然会社を休んだ従業員に対して、会社側の裁量で「自動で年次有給休暇の消化をさせる必要」はありません。また持病によって長期的に会社を休む場合は、健康保険から傷病手当金が支給される形となりますので、長引く病気欠勤に有給休暇を充当するという考え方は、会社側の対応としては問題があると捉えた方が良いでしょう。
年次有給休暇はリフレッシュを目的としたもの
従業員のリフレッシュを目的とした年次有給休暇は、病気の治療目的で存在するわけではありません。風邪などのように1~2日の欠勤で症状が改善する場合は、傷病手当金も使えない状態となるため、「届出がある時には年次有給休暇で対応をすること」も仕方がないといえるでしょう。しかし、持病によって労務の提供ができない状態が長く続く場合は、傷病手当金を使った休職、本格的な治療を含めた改善策を労働者と事業主の双方で考える必要があります。
産業医の判断を仰ぐ方法もおすすめ
労働基準法では、常時50人以上の従業員を使用する事業所に、1人以上の産業医を選任することを義務付けています。企業における健康管理のスペシャリストである産業医を置いておくと、病気欠勤により何度も年次有給休暇を取得しようとする従業員に対して客観的な判断を行えるようになるのです。また病気によっては人事担当者や事業主に相談しにくい悩みを抱えているケースも多く見受けられますので、産業医を上手に活用することが会社の年次有給休暇問題の解消に繋がると考えて良いでしょう。