有給休暇の付与、繰越、上限について正しい知識を
従業員の心身を守り、最善のパフォーマンスによって事業の運営に好循環をもたらすためには、労働基準法で義務付けられている有給休暇の取得が欠かせない要素となります。
従業員の有給休暇取得率の高い企業は、うつ病や生活習慣病といった病気やトラブルが少ない傾向がありますので、有給休暇が取りやすいスケジュールで業務運営を行うことも事業主にとって大事な役割であるといえるでしょう。
今回は、業務が忙しく有給休暇の消化がスムーズにできない場合の繰越や、その上限について詳しく解説していきます。
有給休暇の繰越は可能?その上限とは?
労働基準法の115条では、年次有給休暇の時効を2年間と定めています。
この規定にもとづき年次有給休暇の支給をしている会社では、2年以内に使いきらないと、付与された有給休暇が消滅してしまう状態になりますので、有給休暇を取得した年が忙しい場合は「翌年に多くの有給休暇消化を促す」といった配慮も必要であるといえるでしょう。
繰り越し可能な年次有給休暇の上限については、「前々年に付与された全ての日数」が対象となります。
労働基準法に基づくルールでは、入社から6年半以降で年次有給休暇が20日支給される形となりますので、「最大で20日の繰り越しが可能」と捉えてください。
繰り越した年次有給休暇と今年の付与分を一緒に使うことは可能?
1年を通して繁忙期が続き、全く年次有給休暇の消化ができなかった場合は、会社側の配慮で「年次有給休暇をまとめて取得する」といった珍しいケースも存在します。
また、うつ病や交通事故によるケガなどの治療で数週間~1ヶ月近くの療養が必要となる場合は、繰越分を含めた有給休暇を使って会社を休むという事例もあるのです。
このような有給休暇の使い方には、会社の業務運営への支障や事前申請に関する問題も想定できますので、社内のモラルという意味でも「全ての有給休暇を一気に消化することは現実的ではない」といえそうです。
また、年次有給休暇の取得率が低い会社では、従業員の不平不満が蓄積することで、残業代請求などの労使間トラブルが生じやすい傾向があることを頭に入れておくべきといえるでしょう。
「付与した年次有給休暇を全て繰り越す」という状況は、従業員の健康面に支障をきたすリスクも高まりますので、労働基準法に詳しい弁護士と相談しながら「有給休暇を取りやすい業務運営」などを考えるべきといえます。