「夏休み」は、労働者の権利なのでしょうか?


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多くの従業員が楽しみにする夏休みには、その扱いや会社内がルール設定を誤ることで、労使間トラブルの原因になりやすい特徴があります。

またさまざまなメディアで取り上げられている「夏休みは労働者の権利か?否か?」という部分についても、会社側でどう位置づけるかによって判断が変わってくる実態があるため、注意が必要です。

今回は、夏休みという少し特殊な休日休暇について、従業員との間に認識の違いを生じさせないために必要な基本的な考え方を、労働基準法の観点から確認していきます。

休日と休暇の違い、知っていますか?

まず夏休みについて考える上で最初に確認しておきたいのは、事業主自身が労働基準法で定める休日と休暇の厳密な違いを知っているかということです。

この部分が曖昧なまま自社の夏休みなどを就業規則の中で定めてしまうと、事業主と労働者の間に生じるイメージの違いにより、夏休みが労使間トラブルの原因に繋がりやすくなります。

また会社の夏休みのシステムに不満を抱えた従業員が労働基準監督署などに相談をすれば、そこから社内に存在するサービス残業などの問題が露呈する可能性も出てくることでしょう。

こうした状況をきっかけに会社の事業運営に支障をきたさないためには、就業規則の中で定める内容のひとつとして、夏休みについても慎重にルール作りをするのが理想と言えそうです。

休日の定義と種類とは?

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会社で働く従業員の取得できる休みには、休日と休暇の2種類があります。

まず休日というのは、会社側が設定すべき従業員にとって働く義務の無い日のことを指します。

そして休日の中には、法定休日と法定外休日という種類が存在する仕組みです。

法定休日

会社側が従業員に対して最低限与えなければならない休日を、法定休日と呼びます。

労働基準法の35条では、4週間に4日以上もしくは毎週少なくても1回の法定休日を設けることが、使用者に対して義務付けられています。

そのため例えば、土日を休日とする週休2日の会社の場合、土日のうちどちらか一方が法定休日になる形です。

法定外休日

これに対して法定外休日は、事業主にとっての義務ではありません。

そのため、会社の中に法定外休日が1日もない状態であっても、法律に抵触することはないのです。

しかし一般的な企業では、年末年始や祝日などの法定外休日や、週2回の休日という形で
このカテゴリの休みを就業規則の中で定めるところが多い実態があるようです。

休暇の定義と種類とは?

休日と混同されることの多い休暇にも、労働基準法で定めた年次有給休暇と、会社が就業規則上・雇用契約上定めたものといった複数の種類が存在します。

年次有給休暇

休んだ日数についても賃金が支払われる年次有給休暇は、労働基準法で定める労働者の権利です。

そのため、法律で定めた一定の日数を与えなければ、労働基準法違反で使用者が罰せられることとなってしまいます。

しかし休暇というのは従業員側にいつ休めるか選択できる特徴となりますので、会社側で
指定する休日とは性質の全く異なるものと捉えるようにしてください。

また年次有給休暇については付与の仕方や取得方法などでさまざまな注意点がありますので、就業規則を作る時にはその詳細を整理しておくべきだと言えそうです。

就業規則で定めた各社独自の休暇

就業規則や雇用契約で定めた休暇の中には、慶弔休暇やリフレッシュ休暇、結婚休暇などといったものがあります。

会社側で設定したこれらの休暇は、従業員が自分の仕事と調整しながら好きなタイミングで取得するのが一般的です。

しかし慶事や弔事の時に取得できる慶弔休暇については、亡くなった人との関係などに応じて申請可能な日数を定める会社が多い実態があるようです。

夏休みは休日・休暇、どちらになるの?

休日・休暇における明確な違いがわかったところで、本題の「夏休み」について考えていきたいと思います。

夏休みというのは、会社側で定めたルールによって休日・休暇どちらにも分類できる存在です。

そのため、夏休みの取得を許可する事業主は、下記のような性質によって「従業員の権利か?否か?」の考え方が大きく変わってくるため、注意が必要です。

計画年休という名の夏休み

まず大勢で作業を分担しながら操業する工場などでは、夏休みと呼ばれる期間にラインを止めて、その部署の従業員全員に同時に会社を休んでもらうことがあります。

製造業に多いこうした形の休みを、計画年休と呼びます。

労働基準法の制度ではない計画年休は、休暇・休日のうち、どちらに位置づけることも可能です。

しかし労使間合意の上で全従業員が一斉に有給休暇を取得させる場合は、夏休みという期間内で支給日が減る形となります。

これに対して夏休みを休日に設定した場合は、年次有給休暇が減らない代わりに、時給などで働くアルバイトやパートタイマーにとっては、収入が減ってしまうデメリットがあると言えそうです。

従業員が自ら選べる夏休み

サービス業やオフィスで働くホワイトカラーの会社などでは、会社側で予め定めた期間の中で従業員が好きなタイミングで取得できる夏休みを設けるケースが多いです。

スタッフが自由に取得日を選べるといった意味でこのタイプの夏休みは、休暇のように思えます。

しかし就業規則の中に休暇に関する記載がない場合は、実際に取得する従業員の中で「休日である」という認識が生まれることもあるため、注意が必要です。

またこうした形で取得できる夏休みの中にも、計画年休と似たように年次有給休暇を消化する休みに設定する会社も少なからず存在しています。

夏休みによって生じる労使間トラブルの事例

「夏休み」に対する労使間の認識の違いや、仕事のトラブルなどで夏休みを取得できなかった時、下記のような問題が起こる可能性が出てきます。

休日の夏休みを取れなかった時のトラブル

まず例えば、長期の施設メンテナンスや店舗リフォームなどの期間に休日扱いの夏休みを従業員全員で取得すると仮定します。

このケースの夏休み期間中に顧客トラブルなどが起こって出勤する必要が出てしまった場合は、休日出勤の割増賃金の支払いに関するトラブルを生じさせないために、事業主は法定休日と法定外休日の区別をしっかり明示しておく必要があります。

法定休日の労働には、通常賃金の1.35%となる割増賃金の支払いが必要となってきます。

これに対して法定外休日の出勤には割増賃金の支払いが不要となりますので、夏休みという扱いで長い休日を会社に設ける時には、法定休日・法定外休日に違いを明確にすることが労使間トラブルを防ぐ良策になると言えそうです。

休暇の夏休みを取れなかった時のトラブル

仕事の忙しさやトラブル対応などの理由で休暇扱いの夏休みが取得できなかった場合、会社は基本的に時間外労働の割増賃金を支払う必要がありません。

しかし夏休みという制度を就業規則の中に設けながらも、大半の従業員が取得できないような会社の雰囲気や、繁忙期が続くといった場合は、その体制への不平不満が生じる可能性が高いと言えそうです。

また夏休みには普段はできない従業員のリフレッシュや親孝行などを行い、秋に向けて心身の調子を整えるといったメリットもありますので、夏休みの取得率が低すぎる場合は労働環境の改善が必要な場合もあると捉えた方が良いかもしれません。

夏休みの自社ルールや定義のない場合のトラブル

「夏休み」という休みに対して休日・休暇の区別を付けず、また就業規則の中にも何も書かれていない・・・。

こんな会社では、労使ともに自分の都合の良い形で夏休みの解釈を行える状況とも考えられます。

こうした会社で夏休みの取得ができない従業員が出てきた場合、年次有給休暇の消化や割増賃金などの部分で労使間トラブルが起こりやすくなります。

また就業規則や雇用契約書の中で夏休みに関するルールが何も書かれていない時点で、互いの認識のズレによって生じた問題の解消は難しくなる可能性が高いと言えそうです。

夏休みによる労使間トラブルを防ぐためにできること

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意外と多くのトラブル原因が潜んでいる夏休みの運用をスムーズに行うためには、下記のポイントを抑えた準備をする必要があります。

事業主側で休日か?休暇か?を決めておく

夏休みを導入する事業主が最初に行うべきなのは、自分の中でその扱いを明確にすることです。

また休日もしくは休暇という分類を定めた上で問題になりそうな要素が生じた時には、そのパターンについてきちんと洗い出した上で、従業員が不安や不満を抱かない運用をするようにしてください。

就業規則の中に細かな夏休みルールを記載しておく

従業員が自ら好きなタイミングで取得できる夏休みであっても、その期間や申請方法、取得できなかった時の賃金の支払いについては、就業規則の中にきちんと書いておくようにしてください。

夏休みによって想定されるさまざまな問題を想定する就業規則があれば、急なトラブル対応などにより取得できない従業員から不平不満が生じても、事業主側も戸惑わずに相手の説得ができます。

また就業規則は会社自身を守るために存在するものでもありますので、自社の夏休みに多くの注意点がある場合は、その全てを記載するのが理想となるでしょう。

夏休みの権利について労働者との間で問題が生じたときには?

夏休みの取得や権利について従業員との間にトラブルが生じた時には、労働基準法に詳しい弁護士に相談をしながら、スタッフへの対応と今後の改善策を考えていくのがおすすめとなります。

また休日・休暇の違いや夏休みの扱いで生じるトラブルなども熟知している弁護士に相談をすれば、これから初めて夏休みを導入する会社にとっても問題の起こりにくい運用ルールが整備できると言えそうです。

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