働き方改革とは何ですか?


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政府が2018年国会における最重要法案とも言える「働き方改革」は、全ての人のワーク・ライフ・バランスの充実や社会環境の改善といった意味でも、日本人の大半の関係する大事なキーワードです。

働き方改革という言葉の意味がわかると、国内ニュースなどの理解度も一気に高まります。

またこうしたキーワードや法案の意識化は、就業規則の整備や将来的な人事採用をする上でもより良い鍵になる存在と捉えても良さそうです。

今回は、意外とその内容が知られていない働き方改革について、その意味や目的などの基礎知識を細かくチェックしていきます。

働き方改革とは何ですか?

働く人(労働者)の視点に立って、ライフスタイルや働き方、企業文化などを抜本的に変えていこうとする国の取り組みを、働き方改革と呼びます。

働き方改革の実現に力を入れる安倍内閣では、首相や担当大臣などで構成される働き方改革実現会議の設置により、より具体的な実行計画の策定を行なっています。

働き方改革が必要になった社会の背景とは?

日本政府が働き方改革を行う背景には、下記のような社会問題が大きく関係すると言われています。

労働人口の著しい減少

第一の懸念事項は、労働に適する能力と意思を持つ労働力人口が、大きく減少する兆しがあることです。

人口減少社会へと突入し始めた日本では、労働力人口が大きな社会問題になりつつあります。

こうした状況を危険視した政府では、平成18年の改正高齢者雇用安定法の施行により、団塊の世代の一斉離職という事態を食い止めているようです。

しかし今後の人口推計により更なる労働力人口の低下が見込まれる日本では、社会保障などにおける問題にブレーキをかけるためにも働き方改革が必要不可欠と考えられるようになりました。

少子高齢化の問題

世界でも有数の長寿国であるのに出生率が減少し続ける日本では、少子高齢化という問題も生じています。

待機児童問題が国会などでも取り上げられることの増えた近頃では、子育てにおける大きなハードルとも言える諸問題を解決しなければ、少子高齢化に歯止めがかからなくなるという声もあるのです。

また子供を産まない選択をする女性や未婚の若者に労働時間の長さによるプライベートへの意欲低下などが見られる実態を考えると、晩婚化・晩産化や労働、少子高齢化というキーワードには大きな関連性があると捉えて良さそうです。

長時間労働の問題

欧州諸国と比べて遥かに労働時間の長い日本では、仕事上のストレスや長時間労働による過労死や社会問題化しています。

会社のために全てを犠牲にして働くことが美徳とされた時期の長かった日本では、長時間労働によって生じる過労死や鬱病などの問題にブレーキがかかりにくい実態があるようです。

労働生産性の問題

リーマンショック以降の日本では、労働者が生み出せる成果を指標化した労働生産性についてもOECD加盟国の中で大きく平均を下回る状況が生まれています。

長時間労働をするほど頑張っていると上司や事業主から認められる企業文化のある日本では、労働生産性を高めるために残業などをたくさん行い、結果として過労死をする従業員が増えてしまうといった悪循環が起こりやすい実態があると言われています。

働き方改革実現会議の存在

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さまざまな社会問題の解消に繋がる働き方改革の実行計画作成に向けた審議や調整を行うために、平成28年9月に安倍首相が自ら議長となる働き方改革実現会議が設置されました。

実際に企業経営を行う産業界や労働界のトップや有識者も参加するこの会議は、多種多様なメンバーを交えて検討や審議を行うことで、政府だけでは実現の難しい働き方の改革に好循環をもたらすことができると考えられていたようです。

働き方改革実現会議のメンバーとは?

働き方改革実現会議は、下記のようなメンバーで構成されていました。

・安倍首相
・働き方改革担当大臣、経済再生担当大臣、厚生労働大臣 など閣僚8名
・日本商工会議所会頭
・東京大学大学院法学政治学研究科教授
・全国中小企業団体中央会会長
・イトーヨーカ堂人事室統括マネージャー
・株式会社りそなホールディングス 人材サービス部長 など有識者15名

働き方改革実現会議で話し合われているテーマ

平成28年9月27日にスタートした第1回働き方改革実現会議では、下記9項目のテーマについて話し合いを行う表明がなされています。

・同一労働同一賃金を中心とした非正規雇用の処遇改善
・時間外労働における上限規制の在り方、長時間労働における是正
・労働生産性向上と賃金引き上げ
・雇用吸収力の高い産業への再就職や転職、格差を固定化させない教育、人材育成
・兼業、副業、テレワークといった柔軟な働き方
・働き方に中立的な税制、社会保障制度、若者や女性が活躍しやすい労働環境
・高齢者の就業支援
・介護や子育て、病気治療と仕事の両立
・外国人の人材を受け入れる問題

働き方改革を行う目的と具体的な実行計画

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全十回の働き方改革実現会議では、上記の9テーマの改善に繋がる実行計画や指針を決定しています。

ここでは多くの皆さんが関心を持たれている施策や国の方向性について、その一部を少しご紹介していきます。

非正規雇用の方々の処遇改善

非正規労働者の賃金が正規労働者と比べて6割ほどとなっていることを問題視した働き方改革実現会議では、この格差をなんとかするために同一労働同一賃金ガイドライン案を設けています。

この案をベースに法改正の立案作業が進んでいくと、労働契約法や労働者派遣法、パートタイム労働法といったさまざまな法律における問題が改善されやすくなるようです。

労働生産性向上と賃金の引き上げ

アベノミクスにより着実かつ緩やかに回復しつつあると言われる日本経済にも、人件費の抑制や国内投資、内部留保の増大といった問題が多く存在しています。

こうした社会問題の改善を考える政府では、まず年率3%ほどを目処に最低賃金の引き上げを検討中です。

またこの引き上げに向けて、予算措置や税制などの環境整備に向けた取り組みや、人事評価制度への見直し、賃上げを行なった会社への助成制度の創設といったことも検討されているようです。

長時間労働の是正

欧州諸国と比べて遥かに労働時間の長い日本では、介護や子育てと仕事との両立を無理なく行うために長時間労働の是正を行う必要もあります。

こうした問題に着目した第9回の会議では、過重労働撲滅に向けた特別チームによる捜査や、36協定に罰則付きの上限規定を設けるといったことも決定されています。

また企業幹部へのパワハラ指導なども検討されていますので、長時間労働による悪循環が全社的に改善される仕組みが整う可能性が高いと言えそうです。

柔軟な働き方のできる労働環境つくり

副業や兼業、テレワークなどを認める会社の少ない日本では、こうした柔軟性の高い働き方に繋がる仕組みの普及を図る必要もあります。

こうしたシステムについては、実行力の高い政策手段やガイドライン制定により普及が加速しているようです。

また会社にとって懸念事項の多い兼業・副業においても、対象者の労働時間や健康管理をどのように行うべきかをしっかり盛り込んだガイドラインを設けることで、就業規則の改定なども進めやすい検討が行われています。

病気治療と仕事の両立

労働人口の3人に1人が、病気の治療をしながら仕事を続けていると言われています。

こうした現状を抱える日本では、労働生産性などをこれ以上ダウンさせないためにも、治療と仕事の両立ができる仕組み作りが欠かせません。

また日本の重大な社会問題とも言える不妊治療と仕事の両立に関しても、この会議では高く注目しています。

働き方改革により仕事だけでなく不妊治療への支援が進むと、単純に女性が働きやすいだけでなく、妊娠出産のしやすい世の中になると捉えて良さそうです。

介護や子育てと仕事の両立

高齢化社会へと進む日本では、家族などによるサポートを受けられない介護や子育てにより、離職せざるを得ない方々のことについても考えなければなりません。

また働く女性にとって大問題とも言える待機児童問題に関しては、経験や技能に応じた保育士のキャリアアップや、処遇改善を行うことで人材確保からの好循環が生まれる可能性が高いと言われています。

この他に介護や福祉と仕事といった側面で考えると、障害を抱えた方々の就労についても検討する必要があるようです。

ちなみに障害者の法定雇用率を引き上げる平成30年4月以降は、今まで障害者の雇用がゼロだった企業でも受け入れしやすい支援や講習といった仕組みが徐々に整っていくとされています。

まとめ

9つのテーマについて議論が交わされている働き方改革は、労働者を雇い入れる上でも注視すべき存在と考えられます。

また長時間労働の是正は、労使間トラブルの生じやすいサービス残業などとも大きく関係する部分となりますので、労働に関わる社会問題や働き方改革などに目を向けながら就業規則や社内ルールを作っていくこともより良い会社を築く上で欠かせない心掛けになると言えるでしょう。

働き方改革の内容から改善すべき人事や社内の仕組みでお悩みのことがありましたら、労働基準法関連の問題解決実績の豊富な弁護士に相談をしてみてください。

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