高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ法案)とは何ですか?


mushimegane
働き方改革法案の国会審議が行われる2018年は、高度プロフェッショナル制度や残業代ゼロ法案、裁量労働制といった労働基準法に関係するキーワードが多くの新聞に掲載される日々が続いています。

しかしそんな高度プロフェッショナル制度のネガティブな側面に注目する専門家の間では、このシステムの導入に厳しい意見を発する方々も多い実態があるようです。

今回は、残業代の節約や労使間トラブルの解消といった問題に注目する事業主の皆さんと一緒に、高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ法案)の仕組みや考え方について細かく確認をしていきます。

高度プロフェッショナル制度とは?

特定高度専門業務・成果型労働制という正式名称を持つ高度プロフェッショナル制度とは、専門性の高い職種の一部対象者に対して、事業主や雇用主が決めた一定額の成果報酬を支払う制度の総称です。

労働時間ではなく仕事における成果で報酬を決めていく専門業務型や企画業務型の裁量労働制(現行制度)と比べて、高度プロフェッショナル制度には対象業種が厳密に一致しなかったり、労働時間の既成が緩いといった特徴があると言われています。

また2015年4月に労働基準法改正案として閣議決定されたこの制度には、労働時間によって報酬のベースとなる評価が行われないことから、さまざまな部分で多くの問題が取り沙汰されているようです。

対象業務とは?

この制度の法律案では、対象業務について「高度の専門知識などが必要とし、その業務の性質上、従事して得た成果と時間の関連性が通常高くないと認められるもの」という定義がなされています。

また現段階では、下記の職種の方々が高度プロフェッショナル制度の対象業務に含まれると考えられているようです。

・金融商品のディーリング業務
・金融商品の開発業務
・業務や事業の企画運営を行うコンサルタント業務
・市場や企業における高度な分析を行うアナリスト業務
・研究開発業務

年収要件

高度プロフェッショナル制度の法律案では、厚生労働省による統計結果をベースとした労働者の給与における平均額の3倍相当を上回る水準を年収要件と定めています。

また厚生労働省が省令によって定める年収要件については、2018年4月時点で1,075万円以上にすることが想定されているようです。

ちなみに成果型の賃金制度の導入は、要件になっていないとされています。

この他にも高度プロフェッショナル制度には多くの適用条件がある

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高度プロフェッショナル制度には、年収要件と対象業務以外にも、該当する従業員の選出に大きく関係するさまざまな条件が設けられています。

職務内容

意外と知られていない第一の条件は、当該従業員の職務内容が明確に決まっていることです。

例えば、ある会社の中で研究開発業務のみに専念する年収1,075万円以上の労働者は、高度プロフェッショナル制度の対象になる可能性が高いです。

これに対して研究開発業務の合間に、その仕事とは若干かけ離れた部署の管理監督業務や講演活動といったことをしていて、職務内容が明確ではないと判断された場合は、その従業員を高度プロフェッショナル制度の対象にすることは難しくなると捉えた方が良いでしょう。

労使委員会

高度プロフェッショナル制度を適用するためには、労使委員会における5分の4以上の多数決議が必要となります。

そのため、労働者の大半がこの制度に反対している場合は、労使委員会での多数決議が獲得できないことにより、導入は厳しくなると言えるのです。

また就業規則の変更などをする際にも、労働者側の代表者達の意見は必要不可欠となりますので、基本的に事業主の独断で社内のルールを勝手に変えることは不可能と捉えた方が良いでしょう。

本人の同意

高度プロフェッショナル制度は、対象者となった従業員が同意をした時のみ、導入される仕組みです。

そのため、対象者が事業主の提案を拒んだ場合は、高度プロフェッショナル制度とは無関係な今までどおりの働き方で業務に従事する形となります。

ここで注意すべきなのは、対象となる従業員が同意をしなかった時に、解雇などの不利な対応や扱いをするのは絶対にNGということです。

例えば、「高度プロフェッショナル制度の同意に応じなければ解雇」といった条件を突きつけた従業員から訴訟を起こされれば、会社側はかなり不利になると捉えた方が良いでしょう。

また高度プロフェッショナル制度は社会的に厳しい見解を示す専門家も多い内容となりますので、この仕組みの導入をする際には慎重に計画を立てる必要があると言えそうです。

高度プロフェッショナル制度のメリット

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この制度を導入すると、会社もしくは労働者に下記のような利点がもたらされると言われています。

労働生産性の向上

この制度が考え出された背景には、日本の企業における労働生産性の低さが大きく関係すると言われています。

しかし高度プロフェッショナル制度によって労働時間に報酬が左右されない仕組みが導入されれば、短時間で効率よく成果をあげようとする従業員のモチベーションが高まり、その結果として労働生産性の向上というメリットが期待できるようになるのです。

また日本の会社には仕事が終わっているのに、上司や同僚の目を気にしてなかなか退社できないといった悪い風習が多く残っていますので、時間に囚われない高度プロフェッショナル制度の導入はこの国ならではの悪循環を断ち切るきっかけになるとも考えられています。

ワークライフバランスの充実

企業人材の多様化や女性活躍社会といったキーワードが注目される近頃では、労働環境においてもその整備に繋がる取り組みが話題になっています。

そんな中で提案された高度プロフェッショナル制度には、出退勤時間が自由に決められることにより、介護や育児といったプライベートとの両立がしやすくなる利点があるようです。

またワークライフバランスの実現は、少子化や生活習慣病といった労働環境と大きく関連する問題にブレーキをかける一因にもなるとされていますので、この制度を使うことにより公私のバランスが整う人も出てくる可能性が高いと捉えて良いでしょう。

無駄な残業代のカット

一定条件を満たす人に残業代の支払い義務がなくなるこの制度には、会社にとって人件費の削減ができるという非常に大きなメリットがあります。

特に生活残業目的でダラダラと働き続ける従業員の多い会社では、高度プロフェッショナル制度の導入により、やるべき仕事が終わったら速やかに帰宅するという環境を整えやすくなるのです。

また従来型の制度の中では、事業主が行う人件費削減の施策によっては、サービス残業などの労働基準法違反になるケースも多く見受けられますので、そもそも残業代の支払い義務がなくなるこの制度は事業主にとっても取り扱いやすい内容と言えそうです。

高度プロフェッショナル制度のデメリット

ここまで紹介したとおり大変メリットの多い高度プロフェッショナル制度には、表裏一体とも言えるデメリットもたくさん存在しています。

残業の横行

この制度を導入する上で最も注意すべきなのは、会社側が労働者に求める成果が大きすぎる場合、その達成を目的とするサービス残業が横行する危険性があることです。

高度プロフェッショナル制度によって残業代の支払い義務がなくなり、それでも高い成果や実績が出続ければ、事業主にとって非常に嬉しい状況にもなり得ます。

しかしその背景で成果のために仕事をし続けなければならない労働環境が生まれれば、心身の病や過労死などにより大事な従業員を失う可能性も高まると言えるでしょう。

こうした形で高度プロフェッショナル制度について考えてみると、事業主が削減したいと考える残業代というのは、労使間における労働時間に良きブレーキを与えてくれているとも言えそうです。

成果の評価における難しさ

高度プロフェッショナル制度を導入する場合、「何を成果と位置づけるのか?」というのもしっかり考えなければなりません。

例えば、新薬開発などの医療分野で研究開発業務を行う労働者の場合、多大な時間をかけてもその成果とも言える新製品を世に送り出せるかというのは、実験などを行っている本人自身も断定できない側面があります。

また研究開発業務など分野で成果重視にしてしまうと、実験の回数やパターンなどが激減することにより、あらゆるリスクを想定する研究ができなくなる可能性もでてくると言えるでしょう。

この他に正しい研究結果を導き出すためには、労働者の集中力や健康状態も非常に重要となってきますので、人件費削減だけに着目して安易に高度プロフェッショナル制度を導入することは避けた方が良いと言えそうです。

まとめ

残業代の削減といった部分では大きなメリットのある高度プロフェッショナル制度も、導入の仕方によっては会社にとって多大なリスクになると捉えた方が良いでしょう。

将来的なこの制度の導入について不明点や不安要素がある場合は、その危険性も含めて労働基準法に詳しい弁護士からアドバイスをもらった方が良さそうです。

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