新卒社員の能力不足で普通解雇をする時、会社側の注意ポイントとは?


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多くのフレッシャーズが入社する4~6月は、明らかに能力不足と感じられる新卒社員に対して「普通解雇ができないだろうか?」といった悩みを抱える事業主が意外と多い実態があります。

長きに渡って雇用し続けていた、ある種の「古株」とも言える従業員であれば、本人の努力不足や能力不足に対する指導や、解雇に向けた対応も比較的行いやすいと言えるかもしれません。

これに本人の性格やモチベーションといった特徴が掴みにくく、まだ入社して間もない新入社員の場合は、多くの事業主が彼らの扱い方に戸惑う実情もあるのです。

今回は、明らかな能力不足により新卒社員の解雇を検討中の事業主の皆さんと一緒に、会社が注意すべきポイントを徹底解説していきます。

新卒社員に期待される能力

新入社員の指導や解雇を検討する時にまず把握すべきなのが、会社側で期待する具体的な能力についてです。

この部分が曖昧な状態であれば、当然企業は「あなたは能力不足ですよ?」といった指摘を従業員に行えなくなります。

また能力には内容だけでなく、会社が求めるレベルといった幅もありますので、こうしたことを事業主自身が具体的にイメージ、認識しておくことも幅広い従業員の指導を行う上で欠かせない心掛けとなるでしょう。

雇用契約内容=新卒社員の能力

会社に入ったばかりの従業員と事業主の間で共通認識を持つために、雇用契約内容は意外と重要な位置づけになると言われています。

例えば、雇用契約に具体的な能力に関する記載が全く無いのに、「あなたには会社の求める能力が欠けているようだ」といった話をしても、従業員からすればその根拠がわからないという状況に陥ってしまうのです。

また雇用契約の内容は、新入社員だけでなく中途採用の従業員とのトラブルを防ぐためにも大事な位置づけとなりますので、こうした書面の作成をする際には注意が必要だと言えるでしょう。

募集要項

会社が求める能力がわかる判断材料として、インターネットやパンフレットにかかれている募集要項も大事な基準となります。

例えば、運送会社の募集サイト内に「仲間と楽しく仕事ができる方」、「体力的に自信のある方」といった記載をしておけば、その企業で働く上で協調性やコミュニケーション能力、重い荷物を運搬する上で欠かせない体力が必要であることがイメージしやすくなります。

これに対して「どんな学生さんでもOKです!」といったアバウトすぎる募集要項の場合は、会社にとって能力不足と考えられる人が集まる可能性は高まると言えるでしょう。

面接

人事担当者や事業主自ら行う面接も、会社側が求める能力や雇用契約内容を具体的に伝える際に有効な位置づけとなります。

ここで注意すべきなのは、面接をしたからといって必ずしも能力のない従業員を解雇できるわけではないことです。

また職種によっては就活生自身も、会社が求める作業をできるか否かの判断ができないケースもありますので、面接はあくまでも目安的な位置づけと捉えるのが良いと言えそうです。

雇用契約内容の調査と精査

こうした形で新卒社員の解雇事由にも繋がってくる雇用契約内容は、人事担当者や現場の管理職などを含めて調査と精査を行うのが理想と考えられています。

また採用する側の認識にずれがあると、指導や解雇の判断基準にもバラつきが生じてしまいますので、注意をしてください。

雇用契約書がなくても普通解雇はできる?

普通解雇に限らず、雇用契約書のない状態で従業員を雇うということは、労使間における認識の違いによりトラブルが起こりやすいと断言できます。

また会社が求める能力を書面に残しておけば、そのレベルを満たさない従業員との面談や指導を行う際にも、話し合いを進めやすいと言えそうです。

この他に、万が一解雇された従業員が訴訟などを行った場合に雇用契約書がなければ会社側にとって不利な状況が生まれますので、最悪の事態に備えるといった意味でも雇用契約書を含めた全てのやり取りを書面に残す心掛けは必要不可欠だと言えそうです。

新卒社員であっても世間一般で要求される能力

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これから会社に入って新しい知識や技能を習得しようとする新卒社員の場合、能力不足による解雇はかなり難しい実態があるとも考えられています。

しかし下記のような新卒社員であっても持っているべき能力については、これから仕事を覚える上で土台になる存在と考えられますので、こうした部分のチェックも会社にとっては欠かせないと言えそうです。

最低限の社会人マナー

上司やお客様に敬語を使う、きちんと挨拶をする。

こうした社会人マナーは、大学などの教育課程で学んできた人であれば、必ず持っているべき一般能力と考えられます。

またそれぞれの従業員におけるビジネスマナーにバラつきが生じそうな場合は、入社前にマナーの基礎本を読んでもらったり、新人研修の中で電話対応や名刺交換の指導を行っても良いでしょう。

最低限の一般常識

日本語の読み書きや簡単な計算といった一般常識も、仕事を覚える上で欠かせない位置づけです。

一般的な企業では、こうした常識のチェックをするために、面接前に筆記試験を行う実態があります。

また一般常識のない従業員は、ビジネスマナーを知らない人と同じようにお客様に迷惑をかけてしまう可能性も高いと考えられますので、入社までにできる学習などがあれば提案してあげるのも良心的な対応となるでしょう。

パソコン処理能力

ビジネスシーンにおいてパソコンやタブレット端末の操作が欠かせない今の時代は、レポート作成レベルのパソコン処理能力を求める会社がほとんどとなっています。

また大学生の場合は大半の人がパソコンで卒業論文などを作成しているため、会社側でもわざわざパソコンの基本操作研修などを行わない時代になりつつあるのです。

またパソコンで資料作成などができない従業員は、研修報告書や日報作成なども難しくなってしまいますので、コンピュータを使った事務処理が欠かせない企業では面接時に「どこまでパソコンを使えるのか?」といったことも必ず確認しておくべきだと言えるでしょう。

新卒社員を能力不足によって普通解雇する

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能力不足という問題を抱えた従業員を解雇するときには、懲戒解雇ではなく普通解雇という選択をするのが一般的となっています。

会社の秩序遵守義務違反とも言える懲戒解雇は、従業員の制裁として行われる存在となっています。

これに対して普通解雇は、労使間における信頼関係が壊れたことを理由に、会社側が行う雇用契約解消の手段です。

普通解雇をする時の注意点

解雇権濫用法理の制限を受ける「解雇」を行う場合は、社会通念上相当と判断できるだけの合理的な理由が必要となってきます。

そのため例えば、たったひとりの新卒社員に対して事業主のみが、「あの子の能力不足は酷い」といった認識を持ったとしても、他の従業員や社会一般で「どう考えても解雇はおかしい」と判断される状況であれば、社会通念上といった視点で考えた時に解雇は基本的にできないと言えるのです。

また、まだ本格的な仕事に携わっていない新卒社員の場合、企業秩序を侵害するほどの能力不足というのは世間一般でイメージしにくい状況と捉えた方が良いでしょう。

能力不足の従業員に対してまず行うべきこととは?

事業主が頭を悩ませるほど能力不足の新卒社員がいた場合、最初から解雇を考えるのではなく、雇用契約を続けながら問題解決できる道を模索するのが理想的な対応となります。

例えば、緊張のあまりお客様との挨拶やビジネスマナーなどを忘れてしまう新卒社員の場合は、OJTとしてベテラン営業マンの先輩と一緒に客先まわりをさせてみるとか、顧客対応のない内勤にするといった方法も選択肢のひとつとなるでしょう。

また、それでも解雇を考えなければならないレベルの能力不足を抱えている場合は、その件について本人と話し合いをした上で「今後どうするか?」、「改善できない場合の対応はどのようにしていくか?」といった具体的な相談も必要になると言えそうです。

こうした形で労使間で決めた内容については、必ず書面で記録を残し双方でその情報を共有することが後々のトラブル防止に繋がると言えるでしょう。

ここまでご紹介した対応は仕事の能力の低いベテラン社員にも使える手段となりますので、解雇を考えるほどの問題がある場合は、ぜひこれらの方法を社内に導入してみてください。

労使間トラブルに強い弁護士に相談をしてみる

従業員にどんな能力不足があったとしても、解雇という対応をする際には細心の注意を払う必要があると考えられます。

また解雇は元従業員からの訴訟が起こされやすい事案でもあるため、少しでも新卒社員の扱いや解雇の方法に悩んだ時には、労働基準法関連の問題に強い弁護士に相談をしてみてください。

弁護士と話し合いながら新卒社員の扱いや対処を考えていけば、労使ともに納得した状況下で働ける環境が社内に生まれることでしょう。

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