採用内定を取り消したい企業担当者が知っておくべき注意点


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採用内定を取り消したい時、会社側にどんな事情があっても手続きは慎重に進める必要があります。

何度か採用面接をしただけで一緒に働いたことすらない採用内定者は、人事担当者にとって人間性や性格なども把握しにくい存在です。

しかし既に勤務している従業員と比べて関わりの薄い採用内定者であっても、本人と会社側のトラブルを最小限に抑えるためには、内定取り消しの手続きについてもさまざまなポイントを抑えて対応をすべきと考えられているのです。

今回は、内定者側・会社側それぞれの事情で採用内定の取り消しをしたい状況に陥った時、事業主が確認すべき注意点や理想的な対処方法を詳しく解説していきます。

採用内定の定義とは?

内定取消におけるトラブルを防ぐためには、まず企業における採用内定者の位置付けについて把握しておく必要があります。

始期付・解約権留保付労働契約

これから高校や専門学校、大学を卒業する新規学卒者を採用内定した場合、本人と会社の間に始期付・解約権留保付労働契約が成立していると考えるのが一般的です。

そのため、法律的な観点で考えれば、採用内定の取り消しには労働契約の解約(=解雇)の意味があるとされています。

また一般的な従業員の普通解雇に欠かせない社会的相当性と客観的合理性の双方がなければ、解約権の濫用として内定取り消し自体が無効になってしまうこともあるのです。

裁判で会社側の対応が無効となった場合は、採用しなければならない元内定者との関係は更に難しくなる可能性も高いと言えるでしょう。

採用内定が出された後の一般的な流れ

採用試験の結果により合格決定した内定者には通常、企業から採用内定通知書が送付されます。

その後、身元保証書と誓約書の提出を経て、入社式までの間に健康診断の実施やレポート提出などを行っていくのです。

採用内定を出した後に会社側が注意すべき点

ここで会社が注意すべきなのは、一般的な内定者は企業側から採用内定通知書を受け取った段階で、就職活動を中止してしまう実態です。

そのため、入社直前になって突然、採用内定の取り消しを受けても、そこから新しい就職先の確保はかなり難しくなるのです。

また、内定取り消しまでの期間で一生懸命レポートなどを提出していた場合は、その努力や新しい仕事への期待により、会社に対する怒りや落胆は非常に大きなものになると言えそうです。

こうした内定者の入社までの過ごし方を具体的に想像すると、会社にどんな事情があっても安易に内定取り消しができない理由も納得だと言えるでしょう。

採用内定は自由に取り消せるものですか?

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現時点で就労はしていなくても、解約権留保付労働契約を締結したのと同じ状況である採用内定者は、基本的に試用期間中の新入社員と異なるところはないと捉えるべき存在です。

こうした理由から採用内定の取り消しを行うことは解雇と同様となるため、その背景にどんな事情があっても会社の好きなタイミングで自由にできるものではないと考えられているのです。

採用内定の取り消しができるケースとは?(内定者に関する事由がある場合)

採用内定の取り消しについては、会社と内定者本人、どちらに原因や問題があるかによってもその対応は大きく変わってくる実態があります。

まず、下記のように内定者側に問題がある場合は、内定取り消しをするのもやむを得ないという理由により、不平不満や訴訟の訴えなどが生じにくいです。

誓約書もしくは採用内定通知に書かれた事由に該当した時

合格決定後に取り交わす採用内定通知書もしくは誓約書に書かれた理由に該当した場合は、比較的スムーズに取り消しの対応ができる形となります。

しかしここに書かれた内容が社会通念上明らかにおかしい場合は、訴訟などのトラブルに発展することもあるため、注意が必要です。

こうした書面に事由などを書き並べれば、何の記載がないよりも遥かに解雇などをしやすくなりますが、その内容自体に問題を抱えている場合は逆効果になる可能性もあると捉えた方が良さそうです。

提出書類に虚偽記載が発覚した時

会社側が採用条件としている学歴や生年月日、居住地といった項目に虚偽が発覚した場合も、内定取り消しができるだけの問題であると考えられます。

また虚偽申告をした内容が会社の事業や業務内容に大きく関係する部分の場合は、従業員として不適格という理由で取り消しが認められる可能性は高まると捉えて良いでしょう。

内定者の健康状態が悪くなった時

採用内定した本人に勤務に耐えられないレベルの病気や健康状態の悪化が生じた場合についても、原則的には取り消しを認めるべきという考え方です。

以前から憧れていた会社から内定をもらった本人からすれば、なるべく病気を治して仕事をしたいという想いがあるかもしれません。

しかし一般企業の新入社員がさまざまな仕事を覚えるハードな期間であることを考えると、勤務に耐えられるだけの健康は入社する上でも必要不可欠となるでしょう。

学校を卒業できなかった時

卒業することを前提に採用した場合は、留年した内定者の取り消しも当然認められる形となります。

留年となった単位数が少数の時には、秋卒業→秋入社といった対応に変更することも可能となりますが、この時期に卒業できる保証がないことを考えると、内定取り消しという対応が一般的と言えそうです。

採用内定の取り消しができるケースとは?(会社側に事由がある場合)

これに対して会社側の勝手ともとれる事情で採用内定取消をする際には、まず整理解雇の4要件を満たす必要があります。

例えば、会社の業績の急激な悪化や災害などの問題により、採用内定者を雇っても給与が払えないといった事情のある場合は、整理解雇の第一要件を満たすと考えられます。

しかし採用内定取り消しをする対象者が少数の場合は、その選定に対して合理的かつ客観的な基準を作成し、適正に運用している条件が必要となるため、注意が必要です。

また雇い入れる側が整理解雇を行う際には、労働組合や内定者本人と誠実かつ十分な協議をする必要がでてきますので、何の話し合いもなく一方的に内定取り消しをするのは難しいと捉えた方が良いでしょう。

採用内定を取り消された人の就職先の確保

平成5年に発表された旧労働省の指針によると、採用内定を取り消す時には、対象者の就職先の確保について企業側が最大限の努力をする必要があるようです。

前述のとおり内定者の多くが合格決定とともに就職活動をやめてしまう実態を考えると、こうした対応も企業側には求められると言えるでしょう。

また、就職先の確保に向けた努力や相談にも応じず一方的ともとれる状態で取り消しをした場合は、その会社で得られるはずだった給与などの請求も含めて訴訟を起こされやすくなると言えそうです。

不当な事由で内定取消をした場合はどうなりますか?

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内定者の心情を顧みない勝手な内定取り消しを行った場合、訴訟以外にも会社にとって不都合な状況が起こるリスクが非常に多いと考えられます。

まず訴訟を起こされた事実が社会的に知られると、大事なお客様などからの信用が一気に下がってしまいます。

また、あと少しで入社という段階で取り消しを行なえば、「自分も同じような目に遭うかもしれない」という不安により、翌年以降の新卒応募者が激減する可能性も出てくると言えるでしょう。

内定者とのトラブルを最小限にする内定取消の手続きとは?

これから入社する予定だった内定者との間に問題を起こしたくない場合は、会社側の事情で採用内定取消をしない努力をするのが最も良い方法です。

前述のとおり整理解雇に相当する理由で内定取り消しを行う場合は、「整理解雇回避のための努力をし尽くしたこと」という要件を満たす必要があります。

また訴訟により内定取り消しが無効となれば、その内定者を雇い入れる必要も出てきますので、事業主自身が「本当に取り消すべき事案なのか?」をしっかり考える心掛けも欠かせないと言えるでしょう。

解雇予告手当などの対応

会社側の都合で内定取り消しをする時の解雇予告や解雇予告手当への対応は、専門家によって意見が大きく別れる実態があります。

しかし内定者にとって明らかに不満要素の大きな内定取り消しを行う際には、なるべく早めの予告を含めた対応をすることが、会社側の姿勢を示す良策に繋がると言えそうです。

労働基準法に詳しい弁護士への相談

会社にとっては基本的に行わない方が良いと考えられる内定取消で悩んだ時には、労使間トラブルに詳しい弁護士にアドバイスを仰ぐ方法もおすすめです。

整理解雇などの知識に詳しい専門家から助言を受ければ、会社側が内定者にとるべき対応についても明確になってきます。

また万が一訴訟を起こされた場合においても、予め弁護士に事情を話しておいた方が裁判時のサポートについても受けやすくなると言えそうです。

自分の会社が抱えている事案に合った法律事務所選びが難しい場合は、労働基準法に詳しい弁護士の集うランキングサイトなども上手に活用してみてください。

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