解雇における金銭解決とは?
解雇における金銭解決とは、裁判所に不当解雇の訴えを行なった従業員に対して、金銭で問題の解決を図る方法のことです。不当解雇の訴えを夫婦の離婚問題と同じように捉えれば、金銭解決は慰謝料と同じような意味合いを持つと考えて良いでしょう。今回は、不当解雇の訴えが生じた時の備えとして、金銭解決の相場について詳しく紹介していきます。
金銭解決の相場は非常に幅広い
金銭解決の相場は、その従業員が解雇されたことによって受けた損失や、従業員の再就職の状況によって変わると言われています。しかし実際の判例を調べてみると、下記の2パターンのどちらかで金銭解決の請求が行われることが多いようです。
《給与の3~6ヶ月分》
不当解雇を受けた従業員が再就職活動を行えば、順調に行けば3~6ヶ月で新しい仕事に就くのが一般的です。半年以上の給料分の請求があった場合は、なかなか就職が決まらないことに対する「本人自身の問題」も考えられますので、会社側は「どんな金額でも支払う必要があるわけではないこと」も頭に入れておくべきだと言えるでしょう。
《紛争期間×0.5ヶ月分》
このパターンで計算された金額を請求された場合は、不当解雇を訴えている従業員が「裁判が長期化することを想定している」とも考えられます。このケースでは労使双方が早めに解決の糸口を掴むことが金銭解決の相場自体を下げることに繋がると言えそうです。
和解で終わるか?判決が出るか?
裁判所で双方が事実関係をきちんと話し、和解という形で裁判が終わった場合は、比較的少ない1ヶ月あたりの賃金の2.80ヶ月分程度の金銭解決で済むケースが多いと言われています。これに対して、双方が自分の主張を譲らない場合は、判決まで3年~5年以上の歳月がかかることもありますので、支払金額を膨らませないためにも多少の妥協も必要と考えて良いかもしれません。
訴えられない会社を作ることが大事
従業員の不当解雇を防ぐためには、従業員解雇までのステップをきちんと踏んだ上で、「訴えられない会社作り」をすることが理想だと言われています。また不当解雇などの労使トラブルが1つでも生じると、サービス残業を含めた他の事案でも訴えを起こす従業員が生じることが多いので、金銭解決事案を良い教訓として信頼できる弁護士や社会保険労務士と社内ルールの整備に努めることも事業主の大事な役割であると言えるでしょう。
5 解雇と会社都合退職の違いと注意点 まとめ
境界が曖昧!?会社都合退職と解雇
会社都合退職と解雇は、その境界が曖昧なことで知られています。
例えば、企業側からの一方的な通告で労働者が解雇になった場合は、「会社の都合で解雇を命ぜられた」という感覚により、本人からすれば会社都合退職と取れることもあるでしょう。
また、会社都合退職には解雇のように労働基準法による明文化が行われていないため、企業や事業主、労働者によってその範囲や捉え方が異なるケースがほとんどと考えて良さそうです。
解雇ではなく会社都合退職にするメリットとは?
会社都合退職をした従業員は、7日間の待機期間の後、すぐに雇用保険の給付を受けられます。
解雇によって会社を辞めた従業員は、「倒産や解雇により離職を余儀なくされた」とかんがえられるため、結果として一般離職者と比べて優遇された形で雇用保険の受給が行われるのです。
こうして会社都合退職と解雇を比較すると、「従業員にとっては後者の方がメリットも高い」と考えられますが、解雇には会社側にとって意外なデメリットがあるため注意が必要です。
解雇をすることで会社側に生じるデメリット
従業員の解雇や退職勧奨を行なった会社は、半年~1年の間、厚生労働省が管轄している助成金を受けられなくなります。
このデメリットを知らずに従業員の雇用保険給付のことだけを考えて離職事由を「解雇」にしてしまうと、現在申請中の助成金の全てが却下されるため注意が必要です。
また解雇をした会社はハローワークから見てもあまり良い印象を持たれなくなってしまいますので、「地域の評判や信用」といった意味でも企業側からの一方的な退職勧奨は避けるべき存在と言えそうです。
まとめ
多くの事業主を悩ませる解雇と会社都合退職は、どちらも「企業側からの一方的な退職勧告であること」を考えると、事業主としては極力行うべきものではないでしょう。
また雇用保険受給を考えて離職事由を「解雇」にしても、「会社を辞めさせられた」という不満が消えることはありませんので、何らかの理由で退職を促したい従業員がいる場合は指導や教育、話し合いをした上で相互に納得できる道を選ぶことが理想といえます。
特に近頃では不当解雇による労使間トラブルが増えていますので、従業員の退職に関する判断は弁護士のサポートを仰ぎながら慎重に行うべきといえるでしょう。