定年退職、定年解雇、定年延長、定年後再雇用の違い


高齢化社会へと進む日本国内では、企業と労働者の間における定年に関する問題も多発し始めています。

また高齢者雇用安定法の改正が行なわれた2012年以降は、定年に至った従業員の扱いに悩む事業主の方々も多い実態があるようです。

今回は、定年の労働者の雇用をする上で必ず知っていただきたい定年退職、定年延長、定年後再雇用の違いと、労使間トラブルの防止に繋がる考え方を徹底解説していきます。

定年とは?

ある一定の年齢に達した人が仕事を退官・退職することと、その年齢を総称して、定年と呼びます。

また期間の定めのない労働契約を結んだ従業員に対する退職事由としても、定年という言葉が用いられるケースが多い実態があるようです。

《定年の年齢はどうやって決まるの?》

定年の年齢は、それぞれの会社で決める仕組みとなっています。

しかし基本的に会社に定年の年齢を決める義務がない実態から考えると、就業規則の中で「定年なし」と定めることも可能となるのです。

ちなみに平成28年の就労条件総合調査結果には、定年を定めている会社が95.4%もあるのに対して、定年のない企業が4.6%も存在すると書かれています。

《定年は何歳でも良いの?》

高齢者雇用安定法第8条では、会社が定年を定める時に60歳を下回ることができないようにしています。

しかし将来的に厚生年金の受給年齢が65歳へと引き上げられることにより、事業主にも定年に関する対応が求められている形です。

《「自分の定年はどのように確認すれば良い?」と従業員から質問されたら?》

従業員から「自分の定年は何歳なのか?」という質問があった場合は、就業規則を確認した上で互いの認識を一致させるのが理想となります。

退職に関する事項に含まれる定年は、就業規則における絶対的記載事項です。

そのため、就業規則の中に定年の規定が書かれていない会社の場合は、「定年なし」という結論に至ることができるのです。

また社内に定年のある会社では、その仕組みが慣行的に行われている必要もありますので、就業規則に書かれた年齢を過ぎた従業員がそのまま働き続けている場合は、その内容を確認した労働者から「定年なし」と判断されても仕方がないと捉えるようにしてください。

定年制で会社を辞める際に用いられる2つの考え方

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定年制を導入する側、定年制によって辞める側の双方に混同されやすいのが、定年退職と定年解雇という2つの概念となります。

《定年退職とは?》

会社が定めた定年に到達した時に、使用者の特別な意思表示をしなくても当然とも言える形で労働契約が終了することを、定年退職と呼びます。

定年退職の規定をわかりやすく定めている就業規則の中には、「従業員の定年は60歳とし、定年に到達した月の末日をもって退職となる」といった一文が書かれている形です。

《定年退職における厳密なタイミングとは?》

労働基準法では、会社の定める定年年齢に達した誕生日の前日以降に、定年退職日とすることが可能と定めています。

しかし一般的な会社では、誕生日もしくは年度ごとのどちらかで、定年日を規定する実態があるようです。

例えば、従業員の人数が少なく定年日の管理が比較的容易に行える会社では、定年年齢に達した誕生日を定年日とすることが多いです。

これに対してそれぞれの誕生日と定年日への対応が面倒であったり、年に1度の一括採用日までに欠員が増える状態を防ぎたい場合は、年度ごとに定年日を揃える方法を導入することも可能となります。

《定年退職と混同されやすい定年解雇とは?》

これに対して定年解雇は、定年退職と比べて考え方が難しい存在です。

一般的には定年制の規定の存在しない会社において、解雇事由の中に「◯歳の定年に達した時」と書かれている場合は、定年解雇と捉えた方が良いと考えられます。

《定年解雇における注意点》

定年を理由に従業員の解雇をする際には、一般の解雇と同じように労使間トラブルが起こりやすい実態を頭に入れておく必要があります。

例えば、就業規則の中で定年解雇のルールを定める際には、「どのような時に解雇に該当するのか?」を記載した上で、合理的かつ合法的で、誤解のない内容にしなければなりません。

また厚生労働省令で定められている事由で離職する高年齢の従業員が再就職を希望する際には、その援助に対して必要な措置を講じることが企業に義務付けられていますので、事業主はさまざまな注意点をクリアする必要があると言えるでしょう。

こうした形で非常に方法などが難しい定年解雇を導入する際には、労働基準法に詳しい弁護士などに相談をしながら就業規則の作成などを行った方が良差そうです。

高齢者雇用安定法の特徴と改正内容とは?

高年齢の労働者が少なくとも年金受給開始年齢まで能力と意欲に応じた形で働き続けられることを目指す厚生労働省では、平成25年4月1日から下記の4ポイントを備える高年齢者雇用安定法を施行させています。

《継続雇用制度の対象者の限定を廃止》

この法律では、定年退職後の継続雇用の対象者を限定させてしまう基準を労使協定で定められる仕組みを廃止し、希望者全員が継続雇用できるようにしています。

高年齢者雇用安定法が施行された平成25年3月31日時点で継続雇用制度の対象者の基準を既に設けている会社の場合、下記のような経過措置が設けられている形です。

・平成28年3月31日まで → 61歳以上の従業員に対して基準の適用が可能
・平成31年3月31日まで → 62歳以上の従業員に対して基準の適用が可能
・平成34年3月31日まで → 63歳以上の従業員に対して基準の適用が可能
・平成37年3月31日まで → 64歳以上の従業員に対して基準の適用が可能

例えば、平成31年3月31日までの期間は、62歳未満の再雇用希望者全てを対象にしなければなりません。

これに対して62歳以上の人達は、基準に適合させる人を限定できる仕組みです。

《継続雇用制度の対象者を雇用する会社の範囲拡大》

高年齢者雇用安定法の施行により、定年を迎えた従業員の継続雇用先を自分の会社だけでなくグループ内の関連会社や子会社まで範囲を広げられるようになりました。

ここで指す子会社とは、議決権の過半数を有するといった形で支配力を及ぼしている会社となります。

これに対して関連会社は、20%以上の議決権を有するなどの形で大きな影響力を及ぼす企業のことです。

グループ内の子会社や関連会社で再雇用をする場合は、継続雇用に関する事業主間の契約をしなければなりません。

《義務違反企業への公表規定を導入》

この法律の施行により、高年齢者雇用確保措置を実施しない会社に対して、ハローワークや労働局からの指導が実施されるようになりました。

指導を行っても改善が見られない会社については、高年齢者雇用確保措置義務に関する勧告が行われる形です。

それでも会社の法律違反が続く場合は、ペナルティとして企業名が公表されることもあります。

《高齢者雇用確保措置の運用・実施に関する指針》

今後は、労働政策審議会などの議論などを通して、事業主が実施すべき高年齢者雇用確保措置に関する指針などが策定される形となります。

またこの指針の中では、業務の遂行に耐えない従業員における継続雇用の扱いなども含まれる形となりますので、この制度のスタートは高年齢者への対応に悩む事業主にとっても大きなメリットがあると捉えて良いでしょう。

継続雇用制度における2つの種類

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これまで従業員の希望によって行われることが多かった継続雇用制度には、大きく分けて勤務延長制度と定年後再雇用制度という2つの種類があります。

《勤務延長制度(定年延長)とは?》

定年の年齢に達した人を退職させずに、そのまま引き続き雇用することを勤務延長制度と呼びます。

定年延長とも呼ばれるこの制度で継続雇用をする際には、労働条件の変更などについて就業規則の中で定めておく必要があります。

また当該従業員の個別の同意を得ていない場合は、原則として定年の年齢に到達した時の条件をそのまま引き継ぐ必要が出てくると捉えた方が良いでしょう。

《再雇用制度とは?》

これに対して定年後再雇用制度は、定年の年齢に達した従業員をいったん退職させた上で、再び雇用をするシステムです。

定年で退職するこちらの制度の場合、労働契約の終了により今までの労働条件が一度リセットされる形となります。

再雇用時には労使双方の合意に基づき労働条件を新たに設定する流れとなりますので、勤務延長制度と比べて認識の違いによるトラブルは起こりにくいと言えるでしょう。

《継続雇用制度によって再雇用された後の賃金はどうなるの?》

継続雇用によって再雇用された高年齢者の賃金は、労働条件の中で再設定されるのが一般的です。

この制度を使った再雇用後の賃金は、定年になった時の5~7割が相場であると言われています。

しかし継続雇用をする従業員の労働条件は事業主が労働基準法にもとづく形で決めて良い形となりますので、場合によっては当該労働者と話し合いをしながら双方が納得できる金額にするのも方法のひとつとなるでしょう。

まとめ

「定年」に関するさまざまな用語や法律に目を通すと、事業主自身が判断しなければならない多くのポイントがある実態に気付かされます。

またこうした注意点を曖昧にしていると、従業員との間に問題が生じやすくなりますので少しでも不安や疑問点がある場合は、労働基準法に詳しい弁護士と相談をしながら就業規則の作成などを進めていくのが理想となるでしょう。

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