就業規則で兼業を禁止できないって本当ですか?
就業規則によって従業員の副業や兼業を禁止できない背景には、労働契約を通して労務に服するのは「1日の限られた時間のみである」という原則が大きく関係すると言われています。
特に就業時間外については「従業員にとっての自由な時間である」と考えられるため、就業規則で兼業を全面的に禁止してしまうことは、合理性を欠くとされているのです。
また日本のサラリーマンの中には「土日祝日に自宅の田んぼの面倒をみる」といった兼業農家も多く見受けられますので「就業時間外に一切の仕事をしてはいけない」というルールが浸透しにくい傾向があると言われています。
しかしこのような実情を持つ日本国内であっても、就業規則の内容を工夫することで、従業員の兼業をコントロール可能になるようです。
兼業に関する規程を設けている会社も存在する
従業員の副業によって本業への支障が出ることや、会社の秩序が乱れるといったリスクを回避したいと考える企業では、全面禁止とまではいかなくても、就業規則において兼業に関する規程を設けています。
たとえば、兼業を始める際に上司の許可を得る形にすれば、働き過ぎによって生じるミスやトラブルを回避しやすくなります。
また、兼業の申告を受ければ、兼業のアルバイトを原因とする有給の取り過ぎなどの問題にも的確な指導ができるようになりますので、会社側でもコントロールがしやすくなるのです。
兼業の申告が会社の問題把握に繋がる
兼業の申告を導入した企業の中には「本業の給与が低すぎることで、他の会社で兼業を必要とする従業員が増えている」といった自社内の実情把握につながった事例も多く見受けられます。
また収入的な問題で兼業をする従業員が増えるという事態は、会社の安定を維持する上でも良い状態とは言えない側面があるため、申告制の導入によって企業内の問題を発見できるメリットもあるのです。
兼業の申告によって「誰がどのぐらい兼業を行っているのか?」を把握すると、従業員の健康管理もしやすくなりますので、会社における労働環境の好循環に繋がると考えて良いでしょう。
兼業に関する規程を就業規則内に盛り込む際には、従業員の代表の承認も必要となりますので、スムーズに手続きを進めるためにも労働基準法に詳しい弁護士に相談をするのが理想といえます。