副業を認める時に企業側のリスク回避するにはどうすれば良い?


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平成29年10月より柔軟な働き方に関する検討会を実施する厚生労働省では、その中でも多くの人々に注目され始めている副業や兼業に係るガイドラインやQAをホームページ上で公開するようになりました。

平成26年に中小企業庁で行われた調査結果によると、日本国内で副業を認めている会社は85.3%にとどまる実態があるようです。

しかし厚生労働省で検討会やガイドラインの公開といった取り組みを始めていることを考えると、国の推奨する柔軟な働き方に関係する副業について、企業側のリスクや回避策などについて把握しておくのも事業主にとって必要なこととなりつつあると言えるでしょう。

今回は、これから従業員の副業を認める方向で検討中の事業主の皆さんと一緒に、そのメリットやデメリット、企業のリスクを回避する良策について考えていきます。

副業を認めた会社に生じるメリット

従業員が副業を行うと、労使間に下記のようなメリットが生じやすくなると言われています。

従業員のスキル向上

本業と類似の業界で副業を行なった場合、正社員として働く本業の知識やスキルが更に身につくこともあります。

そのため、デザイナーやライターといったスキルアップの必要な職種の中には、更に高いレベルで仕事をするためのトレーニングとして副業という挑戦をする人もいるようです。

また副業によって高い知識や技術を身に着けた従業員が自社に貢献してくれれば、本業先の会社にとってもコストをかけずに大きなメリットが生まれると言えそうです。

人材流出防止

本業の会社に籍を置きながら副業として新たな挑戦をすれば、志の高い従業員が退職する人材流出にもブレーキがかかりやすくなります。

また休日などの空いた時間を使って副業を行うと、わざわざ高いリスクのある転職をしなくても、自分の希望する月収を得られるようになるといった意見もあるようです。

こうした形で従業員のやり甲斐や挑戦、経済的な部分で満足度を与える副業は、会社への不満から生じる労使間トラブルを防ぐにも大きな利点があると言えるかも知れません。

副業を認めた会社に生じるデメリット

上記のように労使間に好循環を生じさせてくれる副業にも、やり方次第では、下記のような問題の原因になることもあるようです。

健康面の問題

副業のスタートによって本業よりも更に多くの仕事をするようになれば当然、心身に疲れが生じやすくなります。

またこうした状況下で本業の繁忙期などが訪れれば、単なる疲労のレベルを超えて、心身の健康バランスを崩してしまう可能性も出てくるでしょう。

そのため、それなりに忙しい職種のスタッフが副業を始める時には、「今以上の仕事をするだけの余裕があるのか?」といった話も必要になるかもしれません。

本業のモチベーションが低くなる

本業の会社に退屈感を抱いていた従業員が副業を始めた場合、後者の仕事の方が面白くなって、メインの仕事へのモチベーションが低くなる可能性も出てきます。

また前述のとおり今まで普通に休んでいた土日祝や夜の時間が副業という仕事に割かれることを考えると、疲労による集中力低下でやる気スイッチが入らなくなるなどのリスクもあるかもしれません。

こうした従業員が本業先でチームリーダーなどをしている場合は、同チームで働く部下や他のメンバーの意気にも低下が生じる可能性があると言えそうです。

余計な管理業務が会社に増える

会社側が副業を認めた場合、後述する管理業務が確実に増えると考えられます。

また副業の内容や健康状態のヒアリングをするために、上司や事業主の面談が行われれば、それだけ管理職などの時間が当該従業員たちとのコミュニケーションに割かれてしまうと捉えた方が良さそうです。

そのため、既に事業主自身や管理職などに多くの負担がかかっている職場においては、こうした方々の現在の業務に支障をきたさないためにも、「誰がヒアリングをするのか?」や「誰が管理を行うのが理想か?」といった部分を話し合いの中で決めておくようにしてください。

副業を認める会社の留意点1 就業時間全般の管理と把握を行う体制の整備

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従業員の副業を認める企業が最初に行うべきなのは、就業時間の把握や管理をしっかり行う体制やシステムの構築です。

労働基準法の第38条1項とそれに伴う行政通達では、事業場や事業主を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用に関して通算すると定めています。

そのため会社側では、労働基準法を守るといった意味でも、従業員の副業に係る就業時間の管理は把握を行わなければならないのです。

しかし今まで副業を認めてこなかった会社には、こうした管理をするシステムが存在しない実態もありますので、まずは全ての従業員に副業や兼業の内容を届出書で申請してもらう仕組みを整える必要があると言えるでしょう。

副業を認める会社の留意点2 3つの義務を守ってもらうこと

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従業員の副業を認める時には、本業として勤務する会社に迷惑をかけないように、下記3つの義務を確保する必要があります。

・職務専念義務
・秘密保持義務
・競業避止義務

例えば、デザイン事務所で雇入れをされている人が自宅でフリーランスとして副業をする場合は、本業の会社に競合する企業の仕事を請け負ったり、副業先に本業の企業秘密をもらすことは絶対にNGであるという話をしておくべきだと言えるでしょう。

またどんなに本人のスキルアップにつながる副業であっても、その仕事による疲れで本業の集中力や品質がダウンするといった状況も防ぐ必要があると言えそうです。

副業を認める会社の留意点3 健康面の管理と配慮

正社員としてフルタイムで働く従業員が他所で副業をした場合、長い時間働くことにより疲労の蓄積や心身の不調などが生じやすくなる可能性もあります。

こうした状況下で鬱病などのメンタルヘルスの病気や過労死などをした場合、本業先と副業先のどちらが原因なのかという判断が非常に難しくなる実態があるのです。

また副業を始めたことが原因と思われる病気の治療で長期休暇などを取得する必要が出てくれば、本業先の会社には大事な戦力の長期離脱のダメージが起こると言えるでしょう。

このように本業を認める側にとっても痛手となる心身の不調や疲労を防ぐためには、上司や事業主との定期的な面談を通してしっかりコミュニケーションを図ることも必要となります。

従業員が会社のルールを違反して副業を行なった場合は?

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従業員が会社の定める上記のルールを守らず、勝手に副業を行なった場合は、下記のような注意点をクリアすることができれば、懲戒処分などにすることも可能です。

そもそも副業を会社側で禁止することはできないの?

ここで最初に問題となるのが、「そもそも、従業員に副業をさせたくない」や「副業をした時点で懲戒処分にしたい」といった意見です。

まず勤務時間外となる夜間や土日祝などの休日に行われる副業は、使用者の支配が及ばない時間帯といった意味でも、副業などの行動制限ができないという考え方が基本となります。

そのため、副業をしていても全く本業に支障が生じない場合は、懲戒処分などにするのが非常に難しい実態があるのです。

病気休職中の内職は副業になる?

また過去の判例の中には、鬱病などの病気療養中に自宅で軽い内職を行なっていた従業員についても、会社への労務提供に格別の支障が生じず、企業秩序への影響もないという理由で、就業規則によって禁止されている二重就職にはあたらないという判断がくだされた事件もあるようです。

こうした形で会社にとって何のリスクや問題も起こらないレベルの副業を禁止するのは、労働基準法などの部分で考えても非常に難しいと捉えた方が良いでしょう。

副業違反への対応や判断時に会社側が注意すべきこととは?

会社側の定めた副業に関する規則違反について判断する時には、「会社への労働提供に支障を生ぜしめないか?」と「職場秩序への影響はないか?」の2点について考える必要があります。

例えば過去の判例の中には、朝の8時45分~夕方の17時15分まで本業先で働いている女性が、退勤直後の18時~午前0時までにキャバレーで副業をしていたケースで、「誠実な労務提供に支障をきたす可能性が高い」という理由により懲戒解雇が有効になった事例もあります。

そのため、当該従業員が行なっている副業が軽労働であったとしても、勤務時間次第では懲戒処分ができるケースもあると捉えて良いでしょう。

従業員の副業を認めることで生じる企業のリスクに不安や疑問がある時には?

従業員の副業を許可する上でさまざまなハードルがある場合は、労働基準法に詳しい弁護士と相談をしながら、就業規則の内容や運用ルールを決めていくのも大変おすすめです。

労使間トラブルに強い弁護士は、副業を認めることで生じる会社側のリスクなどにも詳しい実態があります。

また副業を行なった従業員を一方的に懲戒処分にした場合、その内容を不服とする相手から訴訟などが起こされるリスクを考えると、会社側が行うべき対応についても弁護士と二人三脚で決めていくのが理想と言えそうです。

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