各会社で定められている年間休日は、従業員の健康やリフレッシュ、ライフスタイルの充実にも繋がる大事な要素となります。
またハローワークへの提出や、会社説明会の配布資料などにも年間休日は記載が必要となりますので、この項目に着目するのは自社で働く従業員だけではないと捉えた方が良さそうです。
今回は、会社を設立する上でも早めに決めておく必要のある年間休日について、「何日に設定するのが理想?」と考える事業主の皆さんと一緒に基本的な知識を確認していきます。
会社の年間休日って何ですか?
週休や祝日、夏季休暇、お盆休み、年末年始休暇、創立記念日といった休みを全て合算したものを、会社の年間休日と呼びます。
例えば、ハローワークで求人票検索をする人の中には、「週休と合わせてどのぐらい休めるのか?」とか「前の会社と比べて休みが多いのか?少ないのか?」を確認するために年間休日をチェックする方々も非常に多い実態があります。
またワーク・ライフ・バランス重視で就職活動をしている人は、年間休日が多い会社に応募をする傾向もありますので、この数字は単純な休日の積み上げというわけでなく、従業員のプライベートにも大きく関わる要素にもなり得ると捉えた方が良いでしょう。
《年間休日に年次有給休暇は含まれる?》
年間休日は、週休や特別休暇といった形で会社側が定めた休みのみの合算となります。
これに対して労働者の権利とも年次有給休暇は、人によって取得率が異なる実態があるため、年間休日に含まれない位置付けとなるのです。
しかし前述のように少しでも多くの休みが欲しいと考える求職者の中には、労働基準法で定められている年次有給休暇の日数と求人票に書かれた年間休日を足し込んだ日数で比較検討をする方々も存在するようです。
日本国内における年間休日数の平均とは?
厚生労働省による就労条件総合調査の結果によると、日本国内では、年間休日数を100日~109日に設定する会社が最も多いようです。
企業全体の中では、32.0%の会社が100日~109日の範囲内で年間休日を設定しています。
これに対して次に多いのは、120日~129日という年間休日の中で最も日数の多い層となっているようです。
また会社の規模別の調査結果では、300人以上の会社で120~129日、299人以下の場合は100日~109日に設定される傾向が高いことがわかります。
《企業側と労働者側で異なる年間休日数》
年間休日数の平均には、会社と従業員の間でその数値が異なる実態があります。
例えば、前述の調査結果を総合すると、企業から見た年間休日の平均が108.0日、労働者から見た平均が113.8日であることがわかります。
こうした形で見る側によって平均値が変わってくる年間休日数は、数値を提出する企業だけでなく求人票などを通して内容を確認する求職者についても、注意が必要な項目と言えそうです。
年間休日数の多い業種・少ない業種
年間休日は、従業員数や会社の規模だけでなく、業種によっても多い・少ないが出やすい特徴があります。
《年間休日が多い業種の特徴とは?》
年間休日が圧倒的に多いのは、製造分野です。
特にコンピュータや自動車といった流通の母数が少ない製品を取り扱うメーカーでは、それ以外の業種と比べて遥かに年間休日が多い傾向があります。
また工場の場合はライン全体を止めてマシンや設備のメンテンスを行うこともあるため、土日祝日休みのサラリーマンでは考えられないような平日に連休が入るケースも少なくない実態があるようです。
これに対して、日用品や衣類、食品といった流通量・需要ともに高い製品をつくるメーカーの場合は、工場や倉庫が365日稼働していることも多いため、同じ製造業であっても前者と比べるとかなり年間休日数は少なめとなります。
《年間休日の少ない業種の特徴とは?》
小売、外食、サービス業といったお客様商売の職種は、年間休日が105日に満たない会社も少なくない実態があります。
また一般の人達が仕事を休む土日祝日やゴールデンウィークなどの大型連休は、サービス業にとってのかき入れ時となりますので、注意が必要です。
こうした形で繁忙期が普通の人と真逆になるサービス業の場合、夏休みなどについても比較的お店が空いている平日に取得するのが一般的となっています。
あなたの会社の年間休日数は何日ですか?
会社の年間休日は、下記の計算式で算出する形となります。
365日 - 年間所定労働日数 = 年間休日数
2月が29日まであるうるう年の場合は、365日ではなく366日で年間休日数の計算を行います。
こうした式を使って計算する年間休日は、その年によって変わり得る数字です。
特に流通量によってラインの稼働率が変わる工場などは、市場動向によって年間休日数が変わる形となりますので、ハローワークの求人票などにこの数字を記載する時には、「103日(平成28年度実績)」といった記載をするのが良心的な対応となるでしょう。
《年間休日数を知らないのは人事労務をする上で失格》
人事労務管理を行う担当者は、基本的に自社の年間休日を頭に入れおく必要があります。
また年間休日は賃金台帳にも記載する項目となりますので、普通に実務をこなしていれば、この数字の意味や存在を知らないという状況は起こりにくいと言えるでしょう。
特に会社説明会や就職フォーラムに参加する担当者は、就職活動をしている人達が休日を重視する実態を頭に入れた上で、自社のシステムを詳しく説明できるようにするのがより良い採用活動に繋がる心掛けと言えそうです。
年間休日数に、労働基準法などによる定めは一切ありません。
そのため、例えば大幅な改装などによって店舗が1~2ヶ月営業できないといった場合は、例年105日前後となる年間休日に数十日プラスされても法律的には問題がないと言えるのです。
しかしこうした会社側の都合で年間休日が一気に下る場合は、日給や時給で働いている従業員への連絡・調整などの配慮が必要になると言えるでしょう。
《法的な定めがなくても大半の会社で年間休日数が近い数字になる理由》
多くの会社の年間休日が100~129日の範囲内になっているのは、労働基準法の第35条で休日に関する定めが別途存在するからです。
この法律では、事業主から労働者に対して「毎週少なくとも1回の休日を与えること」と「前項の規定は、4週間で4回以上の休日を与える事業主には適用されないこと」という2つのルールが定められています。
また労働基準法には、1日8時間・1週間で40時間という規制もありますので、こうしたルールから総合的に考えると、下記のように年間法定労働時間の計算ができる形となるのです。
365日 ÷ 7日 ×40 時間 = 2,085.7時間
この方法で算出した時間に対して、1日8時間までの勤務で残業はなしという条件を当てはめると、年間の労働日数は260日、年間休日数は105日という数値が出てきます。
こうした形で算出をする上での基準とも言える諸条件が決まっている年間休日の場合、その会社が労働基準法を守っている限り、特別な事情を除いて年間100日を下回る極端な状態になることは考えにくいと捉えた方が良さそうです。
《カレンダーどおりなら120日前後》
ちなみに、カレンダーどおりに土日祝日休める会社の場合、2015年が120日、2016年が121日の年間休日数になっていた傾向があります。
その会社ならではとも言える創立記念日などがあれば、ここに1~2日ほどプラスされる形です。
また一般的な企業では、ここに年末年始やお盆、夏休みなどがプラスされて129日前後になる形となりますので、自社の年間休日をこれから決める事業主の皆さんは目安としてこの数字を頭に入れておくと良いでしょう。
年間休日数の設定におけるパターン
最後に、「会社の年間休日数は何日にするのが理想?」と考えている皆さんに、一般的な会社で設けられている年間休日の具体的なイメージや特徴、メリット、デメリットなどを詳しく解説しておきます。
《年間休日数130日》
年間休日数が125~130日前後の会社の場合、土日祝日の完全休み、ゴールデンウィーク、夏季休暇、年末年始といった大型連休が年に数回ある形となります。
これだけ多くの休みがある会社では、従業員が大型連休を使って旅行や遠方にある実家への帰省を行いやすくなります。
また今の時代は、プレミアムフライデーを利用して日帰り眼科手術を行う人も増えていますので、土日祝日がしっかり休める会社で働いている従業員の場合、有給休暇を無理に使わなくても体のメンテナンスや通院なども可能になると言えそうです。
《年間休日数120日》
日本国内で最も理想とされているのが、年間休日数が120日の会社です。
このケースに該当する企業においても、土日祝日の完全休みや夏季休暇、ゴールデンウィーク、年末年始休暇などはあります。
しかし年間休日130日の会社と比べると、年間休日やゴールデンウィークなどの連休が1回につき3~4日で終わってしまう傾向があるようです。
《年間休日数105日》
年間休日数が105日前後の会社の場合、隔週の土曜日出勤、夏季休暇、ゴールデンウィーク、年末年始休暇がもらえる形となります。
またこの他に、完全週休2日+長期休暇なしの会社についても105日前後の年間休日になることが多いようです。
後者の場合、家族旅行や実家への帰省などをするために、従業員が年次有給休暇を取得する可能性が高まります。
また前者についても、子供の運動会や遠足といったイベントが土曜日にある場合は、有給休暇を取得して調整をする従業員が増えると言えそうです。
まとめ
労働基準法で厳密な定めのない年間休日も、法定労働時間をきちんと守っていれば、一般的な会社とほぼ同じ数字になると考えて良いでしょう。
事業主としてはなるべく従業員の稼働率を上げたいと考える傾向がありますが、年間休日が多ければスタッフのワーク・ライフ・バランスもより充実した方向に向かいやすくなります。
またこうした結果によって従業員のストレスが軽減すれば、仕事の効率アップといった好循環も期待できますので、労働基準法に詳しい専門家と相談をしながら労使双方にメリットの高い日数を決めることが理想であると言えそうです。